マルチタスクこそ編集の真髄!? 〜太田剛先生の「編集工学」論〜

2019年9月8日、株式会社ギア(編集工学機動隊 GEAR)の太田剛さんをお迎えし、「コンセプトのつくり方」というセミナーを企画させていただきました。

太田剛さんプロフィール
23年間、松岡正剛氏率いる「編集工学研究所」にて様々なプロジェクトを実施したのち、2012年に株式会社ギア(編集工学機動隊 GEAR)代表に。

「図書館と地域を結ぶ協議会」チーフディレクター
慶應義塾大学講師(ネットワークコミュニケーション実践)
一般社団法人 日本食文化観光推進機構理事
一般社団常人 学習環境研究機構 Fora理事
活字文化議員連盟「公共図書館プロジェクト」事務局長


栃木県「ふみの森もてぎ」、高知県「雲の上の図書館」など新設図書館や、既存図書館の改革などを行なっている。

2019.4.1更新

前回、5月に太田先生が愛媛に来られたのですが、
その時に体験した編集セミナーがとっても面白かったのです!

今回は、9月6日から9日までの3泊4日で、なんと・・・松山・伊予市と場所を変え4回もセミナーをされるということで、
「もちろん参加〜〜♪」と楽しみにしていたところ、

今回の太田先生のコーディネートしていたいけだみえさんから
「春菜ちゃんも何かやりたいことあったら、やってみたら〜」との声。

3日間、県外で4回もセミナー・・・!
想像するだけで、しんどい(笑)

それなのに、私なんかが企画をぶち込んでは先生がお疲れになるに違いない。

そう思って、直前まで遠慮していた私。

しかし、みえさんから
「先生は忙しい方が楽しんでくれると思う(笑)」とのお言葉をもらい、

かつ、伊予市でのワークショップをコーディネートされていたいよ本プロジェクトの岡田さんにも
「太田先生は詰め込まれたスケジュール、お好きだと思います(笑)」と言ってもらい、

「え?いいの???それなら・・・」と、図々しくも先生にオファーさせていただき、
即OKいただき、5番目のセミナーにすべりこんだのでした。

テーマは、私は常に意識している「コンセプト」について。

・・・のはずだったのですが、「コンセプトの作り方」というより、編集工学の真髄を感じられる、熱血編集塾となり(笑)

「編集とは?」
「コンセプトとは?」
「働くとは?」

を深い部分で感じられる、とっても刺激的な2時間となりました。

以下、6日に松山で開催された編集ワークショップと懇親会、8日のワークショップと、その後送迎の車の中で太田先生に聞いた話をミックスして
私がときめいた箇所だけに端折ってレポートいたします。

※注意*ネタバレを含みますので、「これから太田先生のワークショップに参加したいから楽しみにしておきたい!」という方は読まないでください。

ただ・・・先生のワークショップやセミナーはめちゃくちゃ深いので、同じ内容でも何回も受ける価値はあると思います。
(私は同じ話を3回聞いていますが、その都度あたらしい発見がありました)

会場は、三日月とカフェ井門店VIPルームをお借りしました。

自分を編集しよう!自己肯定感なんていらない

まず最初に行ったワークショップは・・・
「自分をお菓子に例えると?」でした。

私は、香川銘菓「かまど」と答えました。

・・・白餡が皮に包まれたお菓子なんて世の中にごまんとあるけれど、「かまど」はまんじゅうに穴が空いてるだけで、なんだか生き物のように見えてきます。
そんなおもしろい存在でいれたら〜♪

そんな気持ちで、答えました。

・・・というのは実は後付けで、
私は過去に見た目が「かまど」に似ている と言われた経験があるので、それに引っ張られて「かまど」としたのでした。

この時に大切なのは・・・【自分の頭の中がどんな動きをしているか】を感じることだそうです。

おそらく脳内では

①自分ってどんな感じ?
②お菓子の種類は?

この2つのリストづくりがガシガシ進むはず。

ここで、①自分ってどんな感じ?に引っ張られてしまうと、②お菓子の種類は?との共通点を見つけることに必死になりすぎて、いつまでたっても答えが出ない。

だから、①の自分をさっさと捨てて、②のリストから仮止めしたお菓子に
自分を寄せていくことが大切なのです。

ちなみに太田先生は、「自己肯定」 という言葉が世界で一番嫌いなのだそう(笑)

自己なんて、他者との関係から築かれていくもの。
たくさんの自分がいてOKなのに
「自分探し」なんかしても、一生見つからないぜ!って話。

ムッチャ!納得!!!!!

どんどん「編集的な自己」をつくっていけばよいのです。

編集にもデザインにも、センスはいらない!

次に、編集とデザインに、センスはいらないという話。

幕別町の百年記念ホール緞帳は、昭和期を代表する有名なデザイナー・田中一光さんデザインなのですが、この模様・・・
上空から見た幕別町の田畑の景色をデザインに落とし込んだものなのです!

編集にもデザインにも
Code(情報そのもの)とModo(背景)が大切。
CodeをどうやってModeにしていくかが、編集の腕の見せ所。

逆にいうと、情報さえ集めて、上手に編集できれば
センスは必要ありません。

コンパイル(事実)のリサーチや理解をした上で、
自分の経験や知識、感情などを生かし、
演出や物語づけ=EDIT(編集)をしていけばいいのです。

太田先生が編集した「幕別町図書館」のウェブサイトのデザインは、田中一光さんの緞帳デザインを応用しているのですが

田中一光さんが緞帳をデザインしたということ、そしてそのデザインは幕別町の田畑の光景が元となっている事実(コンパイル)を使った、編集なのです。

コンセプトに引っ張られすぎるな!〜編集とコンセプトの関係〜

編集は、「個人知」「共同知」「世界知」など共同知を横断する方法。

みんなの知っていることを、独自の言葉でつむぎ、新しい概念を作る技術・・・とでも言いましょうか。

「編集工学」的にいうと、編集は以下の順番で出来上がっていくそうです。

①区別・・・情報単位

②比較・・・対応関係

③方向・・・系列化

④解釈・・・構造化

⑤見当・・・ネットワーク化

⑥対称性・・・コンセプト化

⑦含意・・・文脈整形

⑧突出・・・自己編集性

こうやって見ていくと、「コンセプト」が必要なのってめちゃくちゃ後の方なんです!!!

私は何をするにも「コンセプト」を先に決めてきました。
まずは「コンセプト」を決めて、それに寄せていく。
イベントも媒体も。 

その手順が、少し間違っているかもということに気づかされました。

「コンセプト」が出てこない時は、まだまだリサーチが足りない状態。
無理にコンセプトを考える前に、やることがたくさんあるのです。

編集を理解するための「あいうえお」は、太田先生を理解するための「あいうえお」

「編集を理解するためのあいうえお」を教えていただいたのですが、太田先生と会話を重ねるうちに、これって、太田先生を理解するための「あいうえお」でもあるな〜って思いました。

あん・・・スパッと自分を捨ててもなお、「太田先生らしさ」を滲ませられる仕事!
いん・・・自分の足で土地をまわり、コミュニケーションをとって、背景を鋭く見て本質を取り出す力!
うん・・・松岡正剛さんの引越しを仕切ったことで、「編集工学研究所」にスカウトされたという運!
えん・・・ご縁をとにかく大切にする方。5月に一度お会いしただけの私からの依頼だったのに、快くセミナー講師を引き受けてくれた!
おん・・・出会ったご縁に恩返ししているからこその、ご縁の循環!

太田先生の存在は、まさに生きる「編集」なのです。

ちなみに、「運を良くする」コツは、「常にニュートラルでいること」。
なんかわかる気がします。

先生って、とってもニュートラルなのです。
「色眼鏡」が一切ない!!!

編集の最高傑作は「般若心経」!?

太田先生は、「般若心経は編集の最高傑作だ」と言っていました。


私はまだ、その本当の意味を理解できていないけれど
ここに大きな「編集のコツ」が隠れているような気がしています。

太田先生は、宇宙の全てが入っているという「周期律表」に魅せられて理科の先生になったのですが、この「周期表」「化学の不思議への興味」のおかげで松岡正剛さんにスカウトされることとなります。(詳しくはご本人に聞いてください 笑)

このエピソードを聞いて、
「編集」とは・・

・すでにある情報、今まで先人が積み上げてきた情報にいかに興味を持てるか
・その中から共有の真理(=本質)を見つけることができるか
・そしてそれを「言語化できるか」

にかかっていると思いました。 

太田先生の話を聞いて、今まで全く興味を持っていなかった「般若心経」や「周期律表」に興味を持ち始めた私。
太田先生の編集マジックにまんまとかかっています。

カセギだけでは、本当の仕事じゃない! 目指せソーシャルイノベーション!!!

仕事とは、編集とは・・・「カセギとツトメ」!

「稼ぐ」にも色々ありますよね。
自分だけよければいい・・・といった稼ぎ方も、世の中には存在します。

「編集」も一緒。
中には、上辺だけのカッコよさを求めた自己満足の「編集」もたくさんあるけれど、太田先生の「編集」は違います。

社会がもっと良くなるための「ソーシャルイノベーション」を考えた編集!

ソーシャルイノベーションと聞いて、通天閣を思い出しました。

太田先生が編集された図書館には、その要素がたっぷり入っています。

  • 通うと健康になれる図書館
  • 地域の問題を解決する図書館
  • 引きこもりが解消する図書館 etc…

ぜーんぶクスっと笑えるエピソード付きで、聞いているだけでとっても楽しい。

まさにこれが「編集」の力なんです!

私も自分の仕事が、「ソーシャルイノベーション」に繋がるといいなって思いました。

マルチタスクこそ編集!? 使ッテイナイ脳ヲ起動サセヨ!

最後に・・・太田先生から学んだことまとめ!

太田先生とご一緒した時間で、まとめきれないほど、たくさんのことを学びました。
そして、まだまだ理解しきっていないと感じています。
(学べることがまだまだあるって楽しいですね♪)

色々感じた中で、一番ドカンときたのは、
最後の送迎の時に質問した

「太田先生は、マルチタスクですか?シングルタスクですか?」という質問の答えでした。

答えはもちろん「マルチタスク」

太田先生は、5月のワークショップで
「常にCPU4本一緒に回ってます」と言われていましたが

太田先生は、頭の回転がめっちゃくちゃ速いんです。(セミナー参加したらすぐにわかると思います^^;)

経験からも本からも知識をどんどんストックしていって、
いつでも使えるよう、引き出しで待機させている。

「喫茶店でふと聞いた女子高生の話2時間を、トレースできる」
と言われていましたが、本当だと思います(笑)

松岡正剛さんの教えで本は常に3冊同時進行で読むことが当たり前。
企画も、同時にいろんなものを考え、動かしている太田先生。

ワークショップでも「1個に集中するのではなく、いろんなものを同時進行していった方が早くなるよ」と言われていました。

今、本やネットでやたら見るのは「シングルタスクのススメ」。
私もそれに感化されて、「いつまでもマルチタスクじゃいかん!シングルタスクで、ひとつひとつ終わらせないと・・・」と思っていました。

だから、「同時にやった方が早く終わるよ」っていうアドバイスに目から鱗。

さらに、「使っていない脳を動かしたらいいんですよ。同じ脳を使おうとするからうまくいかない」という言葉に、ガーーーーンときました。

それこそが「編集工学」の真髄かもしれない。
少なくとも、今の私にはそう感じました。

いますぐ、使っていない脳みそを起動させよう!!!

たくさん本を読もう!
たくさん体験しよう!

そしてそれを人生に生かそう。

ちなみに、太田先生は毎日3時間ぐらいしか寝ていないそうです。
編集工学研究所にいた頃は、1週間合わせて3時間しか寝なかったこともあったとか(え???笑)

動いていないと勿体無い。
知りたいことが、読みたい本が、出会いたい人がまだまだあるから
時間が勿体無い。

そんな風に感じました。

先生からは1mmも「仕事つらい」って感じが伝わってこなかったのです。
それよりも「編集楽しい」「これだから人生面白い」って感じが伝わってきました。

太田先生のように、「編集」の大先輩がいて、直接話を聴ける機会があるって、本当にありがたいことです。

太田先生はこれからもちょくちょく愛媛にきてくださるそうです。
またご一緒できる日を楽しみにしています。